vol.204 仮設足場の使い勝手

 前回に引き続きの、"やりやすい現場"、"やりにくい現場"。左右する大きな要因となり得るのは、仮設足場の使い勝手だ。茅葺きは他の屋根工事に比べてやや特殊なところがあるから、特に気を付けなくてはいけない。

 

 トタンや瓦を葺くための足場であれば、ちょっとした物置スペースと、あとは歩けるだけの幅があれば良いかも知れない。しかし茅葺きは、同じ1㎡葺くだけの材料でも、トタンや瓦に比べて非常に場所をとる。材料を置く場所が充分に欲しい。

 そして軒回り。歩けるだけのスペースでは狭すぎる。茅葺きは屋根を叩き揃えるため重たい道具を体の後ろから思い切り振ったり、大きなハサミを屋根に向かって構えたりと、前後のスペースが広く必要になる。

 また、茅葺き屋根は経年とともに厚みがなくなっていく。何も知らない足場屋さんに細かい指示もなく任せると、そのガリガリに薄くなった屋根に合わせて足場を組まれてしまい、新たに厚く葺き直そうとしたらもはや歩ける幅さえなくなってしまう。

 

 今回の現場の足場はかなり狭い。が、土地を見ると致し方ないか…とも思う。山に迫られ、池に囲まれ、建物自体が石垣からはみ出て、人が歩く道の上にせり出している。足場設営自体の難易度が高いから、確保出来る広さもこれが限界だったのだろう。

 

 ここから先は、屋根職人の知恵と段取りの工夫で乗り越えていくしかない。勉強、レベルアップの機会と、ポジティブにとらえよう。