vol.137 御殿場 茅刈り研修

 阿蘇とともに日本の茅の二大産地である、静岡県の御殿場。高速道路で付近を通るたびに、富士山麓に広がる圧倒的な広さの茅場を眺めていたが、今回初めてその御殿場で行なわれる茅刈りの研修に参加させて頂いた。

 

 一口に茅刈りと言っても、奥が深い。誰でもたくさん刈ればいいという単純なものではない。まして御殿場や阿蘇のように、全国の現場や職人のもとへと送られ、日本中の茅葺き屋根の維持を支えている茅ともなれば、茅の質の良し悪しに大きな差があってはいけない。どれも曲がりのない厳選された茅であり、誰が束ねたものも同じ規格に統一されている。“自然の産物であるから仕方ない”という免罪符は、最小限にとどめなくてはいけない。自分が使う分だけ自分のペースで刈っているという程度の立場から見たら、ただただ頭が下がる想いだ。

 

 今まで自分になかったもので、今回の研修で得て面白いと思えたことは、茅刈りをただの体力仕事としてではなく、科学的な側面から検証してみることだ。経験が全て、なイメージのある職人の仕事において、“何となくやっていた”ことに科学的な裏付けが得られると、途端に胸にすっと収まるというか、飛躍的な納得が得られる。

 ・株立ちする茅と一本立ちする茅の違いは何だろう?

 ・なぜこのエリアの茅は、異常に穂先が乏しいのだろう?

 ・なぜこういう変な葉の付き方をする茅が時々あるのだろう?

 ・茅は痩せた土地の方がいい、肥沃な土地の茅は良くないというが、ナゼ?

 ……いくらでも出てくる疑問に対し、可能性レベルであってもちゃんと答えは存在する。

 自分の茅刈りにおいて、少しでも茅場の茅の質を上げて、少しでも効率的に刈れるようにしたい、と考えた時、科学的な検証に基づいて行なうトライアル&エラーであれば、勘で当てずっぽうな試みをむやみに繰り返すよりも、的が絞られた成果が得られるように思う。

 

 全国の茅刈り経験者が集まっているだけあって、各地の取り組みの情報交換が行えたことも有意義だった。どこも抱えている悩みは似通っている。いい取り組みや検証結果の共有によって、各地の茅場、草原、休耕地などが盛り上がりを見せていくと面白いと思う。

 

 そうそう、茅の質には土質が大きく関係しているらしい。そういえば我が茅場はどんな土であったか。帰ったら早速見に行こうとソワソワしていたのに、今年に限って一面の分厚い雪景色。これ全部融ける頃にはもう新芽出てそうやん・・・。茅の新芽が顔を覗かす春を待つ……美山のシカ達と同じ気持ちか。