vol.131 茅の使い方

 茅葺き技術の難しさ、面白さの代表たる部分が、自然の産物であり、ひとつとして同じ材料が存在しないという点だ。ゆえに、材料の質や工事の内容によって、茅を思い通りに加工・調合して使う必要がある。

 

 長さの違う茅があるとする。短いのに合わせて切り揃えればいいではないかと思われるかも知れないが、短い茅ばかりでは寿命の長い屋根を葺くのが難しい。また、切り落とされる根本こそ、一番丈夫な部分で、切り捨てては勿体ない部分だったりする。穂先で切り揃えると、茅束ごとの形状、質感が揃わない。

 だから、現場に積まれている材料の様子を早い段階で見極めて、どうやって上手に均等に消費していくか、現場の職長は作戦を練らなくてはいけない。いろいろな長さの茅が均等にあるなら、長めの茅と短めの茅、それぞれに役割分担を与えて使い分ける。量に偏りがあるのなら、長い茅は上下に切り分けて使うとか、短い茅を長い茅と同じように使うにはどうしたらよいかなど、工夫を凝らさねばいけない。

 長さばかりではない。軸ばかりの固い茅束もあれば、どこまでそぐっても葉っぱしか出てこないような茅束もある。太い細い、真っすぐか曲がっているか…実に個性豊か。

 

 茅刈りのプロから仕入れる茅は、おおよそきれいな茅が多い。自然のものとは言っても、それなりのプライドをかけた商品であり、手のかかる厳選作業を経ている。

 そういった茅を普段見慣れていると、屋根裏に置いてある茅で補修して欲しい…といった昔ながらの依頼を受けた時など、茅を前に途方に暮れてしまうこともある。全部短すぎる、ほとんど葉っぱしかない、バナナみたいな形した茅ばかり…等々。

 けれど、こんな茅では葺けません…ではいけない。昔は村人が総出で集めた茅で屋根を葺いていたのだ。品質はバラバラだったろうし、数を揃えるために、草が多く混じった茅束が出来上がることも多かったろう。与えられた材料を、何とかして使いこなす。そんなスキルも必要なのだ。