vol.69 茅刈りの季節

 出張合間の美山での休みの日。車を走らせていると、この間屋根工事させてもらったお家の老齢のご夫妻が、敷地内で茅刈りをされていた。工事中辺り一面に茂っていたはずのススキが、きれいに刈り取られている。

 ご挨拶に伺うと、突然お邪魔したにも関わらずお茶まで頂き、手を動かしつつもしばし世間話となった。

 「茅にゴミが混じってちゃいかん。もちが良くない。」と、やや強面で黙々と作業するご主人。

 その隣で、「“丁寧に刈ってある使いやすい茅”と言ってもらったのが、うちの主人嬉しかったみたいでね…あれから俄然張り切っちゃって。」とケラケラと笑う奥さん。

 決して楽ではない作業なのだが、ご夫婦でされている様が微笑ましく、何となく輝かしく、羨ましい。

 

 刈り取ってから、混じっていた草クズを丁寧に取り除き、冬の間たてて乾燥。

 春になったら小屋に取り込み、親族が集まった時に茅葺きの屋根裏へあげる。そして空になった小屋に、来年の茅が入ることになる。

 そうして4~5年分の茅が屋根裏に溜まったら、屋根のどこかの面を修理する。それがこのお家の茅葺き暦(ごよみ)。

 

 茅葺きの里美山といえど、こんな営みを繰り返すお家はもはやごくわずかだろう。厳しいなりにも、ゆったりとした時間が流れるこんな景色が、この先も残せるように、増やせるように、何か力になれるといい。