vol.59 屋根下地と向き合う

 今回葺き替える屋根は、どうもかつては『わら葺き』だったのでは、と思われるような下地(骨組み)である。稲わらや麦わらなどで葺かれた屋根は軽い。しかし、新たに葺き直す厚く重たい茅葺きを支えてもらうには、下地があまりにも心許ない。

 やれやれではあるが、抜本的に直す必要がある。

 

 まず、茅屋根の重さを支える垂木(たるき:縦の丸太)の間隔が2mほどもあり、広過ぎる。垂木の間には竹が入れてあるが、これも細く、少ない。さらにその垂木を支える役目の屋中(やなか:垂木を載せる、横向きの部材)に至っては竹である。

 下地が弱いと、重たい茅屋根が載った後、経年で沈んで屋根面に凹凸が出来る。くぼんだ屋根面に雨水が集中するようになり、局所的な腐食を発生させる。だから、下地は蹴り込んでも沈まぬほど頑丈に、かつ平らかに組んであげるのがよい。

 

 もうひとつ、下屋の瓦と茅屋根の下地との距離が離れ過ぎている。

 瓦葺きの上に、茅屋根の下地が被さっているくらいでちょうどいいのだが、今回は場所によって、瓦1列分ほども空いている。

 茅葺きが腐り、軒が薄くなってきた頃、雨水が瓦の奥まで侵入してしまう恐れがある。現に解体前の古い屋根は、瓦の上にトタンがたくさん差し込んであった。ここ数年、雨漏りしていたのであろう。

 瓦を1列足してあげれば解決するが、あいにく瓦の予備はないようだ。茅屋根の下地を瓦付近まで延長してくるしかない。

 

 ・垂木の間隔が広過ぎる → 間に新しい垂木を足す

 ・屋中が弱い竹 → 丸太に入れ替える

 ・瓦との隙間 → 新たに足す垂木を低めに設置し、骨組みの下端を

        瓦ギリギリまで下げる

 

 その他、屋根面がフラットになるように調整。腐った竹を入れ替えてくくり直し。それらの前に屋根裏のゴミのかき出し…etc.

 遠回りで面倒くさい作業だが、後で苦労しないためには今しっかりやっておく方がいい。

 作戦は決まった。後は実行するのみ。しかし煤(すす)だらけの屋根とギラギラの日差しが、どうにもやる気を減退させる…。