年明け一発目の作業は、小さな雨漏りの応急処置。ひどく傷んで薄くなっていた屋根だったが、雨漏りそのものの原因は逆水(さかみず)だった。
"逆水をくらう"という表現は教わったものだったか、自分でいつしかそう呼び出したものだったか定かでないが……、茅葺き屋根の材料である茅は、雨水を外へ外へとはじき出すような角度で葺かれている。それゆえ、屋根の内部まで雨水が浸入せずに済む。
ところがこの角度が何らかの理由で逆さになっている場合がある。あってはならないことだが、こうなると茅は雨水を屋根裏へと誘導してしまう。つまり、雨漏りである。
今回対処が必要なのは1~2㎡ほどの範囲。対応するのは自分一人。本格的な足場(作業するためのステージ)など設営する規模ではない。いかに早く、かつ安全に確実に完了出来るか、がポイント。
ここで、新兵器が役に立った。時々一緒に仕事させて頂く職人さんのオリジナルアイテムを真似て応用したもの。画像に映っている、角材を打ち付けた板だが、汎用性が高く、いろんな局面で使える。
以前書いたように、ハシゴによる屋根の縦移動は容易でも、横移動を可能にするには準備に手間と危険が伴う。それを、狭い範囲であれば、このアイテムで安全に簡略化出来る。
出張から帰った年末休みの間に製作したものが、年始最初の仕事でデビューとなった。まだまだ改良の余地はあるが、久々に道具を手作りするワクワク感を味わい、それを実際に現場に活かせた。
茅葺きの道具は市販されてはいない。それゆえ、皆職人ひとりひとりの手作りである。それは師匠のコピーであったり、自身の感性を反映させたものであったり、その場しのぎであったり、様々だ。
よその職人さんと仕事をすれば、その道具が気になるのは職人の性だろう。自分もいつか、真似させてくれと言われるような道具を開発していきたい。そのヒントは、日々の仕事の中にいくらでも転がっているはずなのだ。
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