屋根を作る作業を動詞にすると、"葺く(ふく)"である。それゆえ我々は、"茅葺き(かやぶき)"職人と呼ばれる。瓦葺き、トタン葺き、スレート葺き…etc、どれも屋根材は葺く、ものである。
しかしながら茅葺きの場合、厳密には、"縫う"ことで屋根を作り上げている。
当然ながら、"縫う"のには糸と針が必要である。そう、茅葺きは文字通り、糸と針で縫い止める。糸とはつまり藁縄であったり、麻糸であったり、針金であったり、様々。針は鉄製であったり、手作りの木製や竹製であったり、様々。いわゆる"刺繍"に比べて、使用する物がばかデカいだけである。
並べた茅の上に横方向に竹を置き、この竹を縄を用いて、屋根裏の下地(骨組み)に縫い止める。縄をきつく締めれば、並べた茅は竹と屋根下地にサンドイッチされる形で固定される。
針受け役の者に屋根裏に入ってもらい、表から刺した針と糸を、屋根裏で下地に回してもらう。こうした作業の繰り返しで、茅葺き屋根は一段ずつ葺き上がっていく。
縫うことひとつにも技術がいる。針を刺す側には、屋根下地は見えない。それでも、上手な人は屋根裏が見えているかのように、正確に針を刺してくる。
屋根裏で糸を受け取る側にも技術がいる。いかに素早く糸を返せるか、いかに正確に屋根裏の下地状況を表の者に伝えられるか。
滅多にないが、ボーっとしていると、表の者が刺した針を体に受ける。笑えないダメージを受けかねない。刺してくる人物の性格を把握しておくことも、ある意味スキルとなるのである…。
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山田みき (金曜日, 27 12月 2019 11:35)
ずっと不思議でした。縫いの文化だったのですね。働く相棒との共同作業、又針を木でも作られるのですね。凄いです。
ぶんな (金曜日, 27 12月 2019 21:41)
山田みきさん、コメントありがとうございます!
長く使った木の針は、茅の油分との摩擦によるものか、何とも言えない艶やかさを放って、味わい深い雰囲気になります。