古い茅葺き屋根の解体が済むと、次に取り掛かるのは屋根下地の補強。
垂木に凹凸があればフラットな屋根面になるよう配置し直し、脆くなった竹を交換し、緩んだわら縄をくくり直して……など。
木と、竹と、わら縄。そして、凹凸を職人の目測で修正する。
初めてこの世界で仕事を始めた頃、なかなか衝撃的だった。
建築業界の仕事って、寸法だの角度だの、寸分の狂いなく仕上げていかねばならないものと思っていたが…。茅葺き界は未だに"感覚"頼り。そして数百年前と大して変わらないであろう、茅、丸太、竹、わら縄・・・などの、自然素材。
高度成長期の頃なら、笑い飛ばされた世界かも知れない。
しかし、エコやスローライフなどと叫ばれ出した今の時代なら、むしろ好感が持たれる分野なのかも知れない。
ただ、現実はそんなに甘くない。竹と縄だけで、人が踏んで乗ってもずれることのない下地を結べるようになるまでには、それなりの修業がいる。きちんと測った木材をネジ止めすれば、誰にでも同じものが出来る…というわけにはいかないのだ。
職人によって違うものが出来る。それは、茅で葺いていく屋根面も同じ。自分なりのこだわりを意識しつつも、全体の均一さを失わないようにする。そこが、個々のスキル及びチーム力の見せ所。
コメントをお書きください